私が過去に業務依頼を受けて実際に訪問した中で、とても印象に残っているお客様がいます。
それはIBM社からの依頼で、同社の音声認識ソフトの使い方について説明して欲しいというものでした。
約1時間かけて現地に到着。
お客様は50代と思われる男性で、パソコンは初心者のようでした。

このお客様、キーボードやマウスもほとんど使えないような印象でしたが、ご希望はそういった操作ではなく、あくまで音声認識の使い方というものでした。
今でこそ音声認識は当たり前のように使われていますが、当時は黎明期であり、ソフトウェア一度操作者の発音のクセを登録するという作業が必要で、音声で正常に漢字変換できるようになるまでの準備に手間がかかるというものでした。

話し好きな方で、本来の講習とは関係ない話を多分に交えながら進めていく中で、この人はパソコンをマスターする事はできないだろうという印象を受けました。
仕事でパソコンを使う必要があるが、今からキーボードの操作を覚えるのは大変だから、こういった裏技的なものを利用すれば楽だ・・・という発想でこのような手段をとったのだと推測されますが、やはりパソコンは初期の時代からキーボードで操作するという基本はほとんど変わっていません。

このお客様とはこの一回限りで、その後どうなったか知りませんが、その時説明した音声認識での文章入力も満足に使えるようにはならなかったのではないかと想像しています。

学問に王道なし。
急がば回れ。
どんな事を何歳から始めるにしても、まずは基本をしっかり身に着ける事が大切なのは言うまでもありません。
楽をして、または近道を通ろうとすると、かえって欲しい結果を得るまでに時間がかかり、そして経費も高くつく事になります。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます。