消火器点検商法がやってきた

私の実家は、いわゆる高齢者一人暮らし世帯。
そういった情報をどこかで調べているのかどうかは分からないが、母親を訪ねて時々見ず知らずの人がやってくる。
数年前にやってきたのは、水質検査をするとの名目にした作業服を着た若い人物だった。
1年位前に来た新聞の拡張員と思われる人物は、自分の身分を告げずに、いきなり野球の話を始めた。
その当時、巷で盛り上がっていた野球を話題にする事で親近感をアピールしようとしたようだ。
先日は消火器の点検をしたいという中年の男性がやってきた。

昨年古い消火器が破裂する事故が起きたので、我が家が10数年以上も前に購入した消火器を点検したいという。
言うまでもないが、点検商法として全国的に知られているまさにそのものだ。
こんな商法が未だに行われているとは、携帯電話全盛の時代に交換手に電話番号を伝えてつないでもらう電話を使っているようなものだろう。

私は実家とは別のところに住んでいるのが、日中は実家の敷地内の事務所にいる事が多いため、こういった人たちに対応する機会がある。
訪ねてきた人物は年齢や外見は異なるが、名札を首から下げている場合が多い。
テレビやラジオなどで、正規の新聞の拡張員や電気設備点検などの場合は名札などの身分証明書を提示すると宣伝しているのでそれを逆手に取っているという事なのだろうが、言うまでもく名札などいくらでも偽造できるので何の意味もない。

もうひとつの共通点として、いずれの人物も "いかにもそれらしい" という雰囲気を醸し出していた。
水質検査の人物は、いわゆる"チンピラ"の風貌であり、新聞の拡張員と消火器の点検は、ジーンズなどラフな格好をしてヒゲをはやしていた。
企業として作業者や営業を家庭に派遣するなら、少なくとも各担当者に最低限の身だしなみを求めるはずだ。
こんな身なりの人物が企業から派遣されているはずはなく、いずれも一目でそれと分かった。

こういった商法をしている組織は、各家庭には一人で周っているが、近くで仲間が待機している場合が多く、見込みのある家を見つけると仲間を呼んで複数で威圧するように購入を迫る場合も少なくない。
なのでできるだけ丁重にお断りする事が大切になってくる。
私は、消火器を買ったかどうかは覚えていないが、買ったとしても期限切れとなったので処分した旨を伝えたところ、その人物はそれ以上食い下がる事なく車で去って行った。

この場合、点検自体を婉曲に拒否する事が重要で、例えば新潟に住んでいる妹の家にあるとか、5年位前にボヤがあってその際使用したという事でもいいだろう。

こういった商法が面倒なのは、行為それ自体に違法性がないまたは薄い事だ。
各家庭にやってくる事自体は特に問題はないし、消火器の点検をする事も違法とは言えないだろう。
本来の目的を偽って他人の家を訪問する事は違法だが、だからといって警察に通報しても基本的に対応はしてくれない。
警察には民事には介入しないという大義名分があり、脅迫まがいの販売方法だったとしても、そのような小さな案件は相手にしないのだ。

ただ、自分の敷地から退去するよう要求する事はできて、それでも相手が立ち退かなければ不法侵入が適用されるので、その場合は警察を呼ぶべきだ。
いずれにしろ、こういった人たちと関わらないためには、訪ねて来た相手が怪しい商法を行っていると判断されても、それを直接相手には伝えず、穏便にお引き取り頂くという事がポイントになると思う。