パソコンのサポート業を始めて10年以上になる。
これまで様々な事例に接して、そのほとんどを解決してきたという自負があるが、今回ばかりは全く手に負えない摩訶不思議な現象に遭遇したのでご紹介したい。

依頼を受けたのは事務所から約50mくらいしか離れていない近所の方。
パソコンは東芝製のノートで、約5年程度使用しているものだという事だが、最近、起動すると突然青い画面に変わり、見た事もない英語の文字が画面いっぱいに表示される状態になってしまい使えないという事だった。

預かってきたパソコンを事務所で動作確認する。
その現象は私の事務所では再現しなかったのだが、使用年数から考えて私はHDDのトラブルを疑った。
HDDを新品に交換してリカバリーすれば復旧するだろうと見込んで早速市内にあるパーツショップで同じ容量のドライブを購入し、交換した。
リカバリー作業、アプリケーションの復元、Office2003をインストール、再セットアップと順調に作業を進める。
この機種はXPだが、比較的初期のバージョンがインストールされていたようで、時間をかけてWindows Updateを実行、画面のテーマやフォントサイズを使いやすい設定に変更した後、最後に元のHDDからマイドキュメントの中身をコピーしそれらの文書やブックが正常に開く事を確認した。
もちろんこの間、10回以上も再起動を繰り返しているが、一度のトラブルも発生していないので私は完全復旧を信じて疑わなかった。

現地で動作の確認を行うべく、パソコンを預かった数日後、直接持参した。
お客様宅は無線LANを利用中なので、早く接続して帰ろうとパソコンの電源を入れ、WINDOWSの起動完了を待っていたら、なんとブルースクリーンになるではないか。
念のため電源スイッチ長押しで一旦シャットダウンをした上で再度起動しようとしても同じ現象の繰り返し。
何度試みても、ついに一度も正常に起動する事はなかった。
こんな事があり得るのだろうか?

私は今まで、お得意先の企業からネットワークがつながらないという連絡を受けて訪問しても何の問題もないというような事は数多く経験している。
しかし、これほど極端な事例は初めてだった。

以前、電化製品の修理を担当していた方の話で、修理に上がってくる多くの機器は実は壊れていないという事を聞いた事がある。
修理が必要として持ち込まれた多くの製品が、実は壊れているのではなく、それを使う人の乱暴な気持ちが伝わってしまっている事が原因で正常に動作していないのだという。

今回の事例がそれと同じ理由かどうかは全く分からないが、このような現象が起きたのは紛れもない事実である。
あえて合理的な理由を推測するとすれば、ある程度の期間使われて劣化しているマザーボードなどの部品が、そのお宅または近所のお宅で使われている何らかの機器から発せられる電磁波など機械の動作に影響を及ぼす要素によって誤動作しているという事になるだろう。

結局一旦交換したHDDを元に戻した上で再度リカバリーをして納品したのだが、最終的に使えるようにはならなかった。
本当に不思議な現象だった。