先日相談を受けた事例をご紹介します。

以前からお付き合いのある(パソコンに詳しい)方から連絡がありました。
ノートパソコンのボタン電池を交換して欲しいとの内容でした。

デスクトップでもノートでも、ほとんどのパソコンにはボタン電池が内蔵されていて、主に基板上のチップに内蔵されている時計のバックアップに使用されています。
このボタン電池が消耗すると、電源を入れた時に時計がリセットされている状態になります。
また機種によっては全く起動しない状態になる事もあるようです。

ボタン電池の交換は、デスクトップ型(ディスプレイ一体型を除く)なら比較的容易に行う事ができます。
本体ケースを開けると見える基盤(マザーボード)上にそれを確認する事ができます。
100円ショップやホームセンターなどで同じ型番の電池を調達し、交換するだけで完了です。
ただ、静電気が発生しやすい季節は事前に放電するなどの対策を行わないと電子部品を破損する恐れがありますので注意が必要です。

問題はノートパソコンです。
ノートパソコンは高い密度で部品が組み込まれています。
機種によっても多少異なりますが今回依頼を受けたD社の製品は、ボタン電池を交換するには部品をバラバラに分解する必要があるものでした。
ほとんどのメーカーではノートパソコンの保守マニュアルを公開しておらず、やるとすればブログなどの記事を参考に作業するしかありません。
非常に危険性の高い作業であるため今回は対応できない旨をお伝えしました。

検索で調べてみると、今回の機種では新品で購入後2年程度でボタン電池が消耗してしまう場合もあるとの報告がありました。
そんなに早く障害が発生する可能性があるにもかかわらず、その原因である電池の交換が容易にできないのは製品自体の欠陥であるとも言えます。
ちなみに私が以前使っていた機種は10年弱使用しましたがボタン電池が消耗して時計がリセットされるという現象は起こりませんでした。

製品の価格が下がってきている今日、機器の修理で売り上げを確保したいというメーカーの都合はもちろん理解できます。
しかし、105円で購入できる電池を交換するのにメーカーまで送らなければならない、その間1週間以上もかかるのではあまりに不便です。
パソコンメーカーはもっと利用者の利便性を追求した設計を行うべきであると思います。

このところ、スマートホンやタブレット端末に押されてパソコンの売れ行きが大きく減少しているとの報道がされていますが、こういった "利用者の利便性" に欠けた設計である事もその一因であるように感じた一件でした。