先日、あるお客様から緊急の電話が入りました。

"サーバーに保存してあった設計図面などのデータを誤って削除してしまった" との事。

ファイルを誤って削除してしまった場合でも削除した直後に気づいて、そのドライブ(ハードディスク)へのアクセスを中止すれば、データを復元できる可能性があります。

これを理解するには、パソコンがハードディスクなどの記憶媒体にどのように記録しているかというしくみを理解する必要があります。

かなり専門的な内容なのですが、分かりやすく説明してみます。

ハードディスクは、データそのものを記憶する部分と、そのデータが記録されている場所などの情報を記録した索引部分に分かれています。

パソコンがデータを読み書きする場合、まずは索引部分を読みに行きます。

操作者がワード文書を開くために、"マイドキュメント" フォルダを開いたとします。


そしてその中に
2006年賀.doc
同窓会名簿.xls
緊急連絡網.doc
という3つのファイルがあったとします。

これは、Windowsが索引部分を見て表示しているのです。

索引には、これらのファイルの大きさや実際に記録されているデータ部のアドレス(場所)などの情報が登録されています。

このうち、"緊急連絡網.doc" というファイルを削除したとします。
削除の操作をすると、Windowsは実際のデータ領域には一切触れずに、索引情報からそのファイルの登録を削除するのです。

ファイルをコピーするのに比べて削除が圧倒的に早いのはそのためです。

そして索引が削除されてしまうと、削除される前に存在していたデータ領域の部分は、何もないものとして扱われ、新たにファイルをコピーするなどデータを書き込む操作が行われると、その領域に上書きします。

ですから、誤操作でファイルを削除したとしても、それはあくまで索引を削除しただけですので、その索引が復元できればデータ自体の復元も可能なのです。

また、削除した直後に気づいて使用を中止すればというのも上記の理由からです。


ですから、データを削除してから処分したつもりのパソコンから情報が漏洩するというのも、データの保存がこのようなしくみになっている事を考えれば理解できるでしょう。


ごみ箱に残っているのではないか? と思われたかたもいらっしゃると思いますが、ごみ箱に残るのは自分のパソコンのドライブ(ローカルディスクといいます)からファイルを削除した場合であり、サーバーのように、ネットワークでつながっているディスク(リモートドライブ)の場合ゴミ箱に入らずに削除されてしまうのです。

こういった場合、とにかく誤操作に気づいた時点で冷静に対処するのが大切です。

具体的な操作は、データを復元するソフトを使用して作業します。

今回、連絡のあったお客様のサーバーからデータの復元を試みた結果は、削除してしまったデータをきれいにそのまま復元できた訳ではありませんが、必要なデータの多くは何とか復元に成功し、事なきを得たのでした。