企業が近い将来、ある製品の販売を開始すると大々的に宣伝する事がある。
最近の例でいえば、アップルのiPadが代表的である。
その内容通りの製品が発売されればもちろん何の問題もないが、中にはその製品が販売開始されないまま終わりになってしまう事もある。

私の知り合いがある企業の株主になっているのだが、その企業が画期的な商品の開発・販売を行う予定である事をその知り合いから聞かされたのが約1年前。
株主総会などの場所で株主など企業の支援者・関係者に向けてその製品の発売を発表したという。

その人の話によれば、その画期的な製品とは小型の携帯端末で、インターネットに接続すれば利用者同士で無料のテレビ電話やネットオークション、ネット通販などが楽しめるという。

これだけならいわゆるPDAなど既存製品と何の違いもないが、その新しい製品の特徴としてマウスやキーボードなどの使用を苦手とする比較的高齢な人でも容易に使える事だという。

OSにLINUXを採用しているので比較的安い価格で提供でき、ある程度の知識が要求されるアプリケーションのインストールなどといった事は一切必要ないというのが画期的な理由であるという。

その人によれば、発表の時点から数か月後に販売を開始する予定だったらしい。
しかし、その話が出てからすでに1年。
未だに発売が開始されていないし、関係者に配布するとされている実物も未だに届いていないようだ。
推測だが、恐らくこのまま発売される事はないのではないだろうか。

私など、確実に量産できる体制になってから発表すればいいと考えるが、一部の経営者にとってはそうではないのだろう。

なぜ発表してから1年経過しても発売されないのかといえば、そもそも発売できる見込みもないのに発表しているから。
ではなぜ量産体制が整うかどうかも分からない時点で発表するのか、その理由は大きく2つあると思う。
1.経営者のプライド
2.資金調達

レベルの低い経営者ほどこのような行動をする傾向にあると思うが、自社が全く新しい製品を開発・販売すると発表する事自体が快感なのだろう。
他社を出し抜いたという優越感や、先進性をアピールする事で自社の技術の優秀性を内外に示し、それによって満足感を得るという実に幼稚な発想なのだが、実際にこのような行動をする経営者がいるのだ。

また資金調達という面でも効果が見込める。
先進的な製品の販売を発表する事で株価が上昇する可能性があり、それによって資金調達が楽になるという利点も考えられる。

実は私が以前に勤務していた企業の経営者が今回と全く同じ事をしていた。
その企業はパソコンのソフトウェアを輸入し翻訳など日本向けにアレンジして販売するビジネスに乗り出したのだが、まだ輸出先企業と正式に契約を交わさない段階で、新バージョンの日本語版が発売される事を時期を含めて発表をしてしまったのだ。

当時、そのソフトの旧バージョンを利用していた顧客がその時期に新バージョンが発売される事を前提に業務を進めていたようで、いついつまでにお客様に納品しなければならないのだが、いつになったら発売されるのかという問合せに、社内の営業担当が返答に窮していた姿を思い出す。
この件で既存顧客からも大きく信用を失った事もあり、結局この企業は業績不振で解散という結末になってしまった。

という事で、画期的な新製品という発表をそのまま信用するとヒドい目に逢いかねないのでくれぐれもご注意を。